読書メモ「武器としての交渉思考」

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武器としての交渉思考を読んだ。

キーワード 🔗

「バトナ」 🔗

バトナとは、英語の「Best Alternative to a Negotiated Agreement」の頭文字を取った言葉です。簡単にいえば、「相手の提案に合意する以外の選択肢のなかで、いちばん良いもの」という意味になります。

つまりバトナとは、目の前の交渉相手と合意する以外にいくつかの選択肢(Alternarive)があったときに、「交渉相手に、私はあなたと合意しなくても別の良い選択肢があるので、それよりも良い条件でなければ合意しない」と宣言できる他の選択肢ということになります。

交渉へ臨む前に、交渉相手と合意する以外の選択肢を多く持ち、そのなかで自分にとってもっともメリットの大きな選択肢(つまりバトナ)を持つべき。バトナがなければ交渉が不利になる。

交渉は自分と相手のバトナで決まる。自分のものだけでなく、相手のバトナも考えなければいけない。「この交渉が決裂したとき、相手はどうなるか」を考えると相手のバトナを分析できる。

自分のバトナを悟らせない。こちらにより良い選択肢があると相手に思ってもらえれば、良い条件を引き出せる。悪い選択肢しかないと思ってもらえれば、油断を誘える。バトナは実際の良し悪しよりも、相手側の認識が大切。

「ゾーパ」 🔗

自分と相手のバトナを正しく把握できるようになると、「この条件より悪ければ合意にいたる必要がない」と判断できるようになります。つまり「合意できる/できない」範囲が決まるわけです。その「合意できる範囲」のことを「ゾーパ(ZOPA)」と呼びます。

ゾーパとは「Zone of Possible Agreement」の略で、日本語にすると「合意が可能となる範囲」といった意味になります。

ゾーパがない場合もある。その場合は交渉をするだけ無駄。合意にいたってもお互い損するので決裂した方がマシ。

ゾーパのどの位置で合意するかによって双方のメリットの大小が変わる。win-winという言葉があるが、どちらも等しくwinするわけではない。どちらかのbig winは他方のsmall winになる。

「アンカリング」 🔗

ひと言でいえば、錨とも言うべき「最初の提示条件」(これを交渉用語ではアンカーと呼びます)によって、交渉相手の認識をコントロールすること

アンカリングとは、さきほども少し説明したように「最初の提示条件によって、相手の認識をコントロールすること(もしくは、認識がコントロールされてしまうこと)」です。

交渉の結果はスタート地点によって大きく変わる。自分にとって有利な条件を初期に提示して、相手をアンカリングすると良い。逆に相手の提案は、それがアンカリングではないかと疑うと良い。

有効なアンカリングは3つの条件を満たしている。

  1. 高い目標
  2. 現実的
  3. 説明可能

一定の常識的な範囲内だからこそ、合理性が生まれて交渉の武器として使える。

「譲歩」 🔗

交渉における譲歩とは、自分の条件の一部を諦める、あるいは、相手にとって得となる別の付加価値をつけることを言います。

無条件の譲歩は絶対にしてはいけない。また、「相手にとっては価値が高いが、自分にとっては価値が低い条件」を譲歩の対象とすべき。

相手の譲歩は、それが相手にとって価値が低いというサイン。その情報を使って新たな譲歩を引き出せないか考えると良い。そのため、相手の譲歩をすぐに受諾しない方が良い。

「非合理的な交渉者」 🔗

非合理的な交渉者を相手にするときは、そも特性に応じて交渉のやり方を変えると良い。

交渉者概要交渉のやり方
「価値理解と共感」を求める人自分だけの独自の価値観、個人的な信念を利害関係よりも重視する
  • 相手の価値観に合わせる
  • 相手の価値観を変えようとは思わない
  • 共通の敵を設定して、共犯関係になる
  • 「ラポール」を重視する人交渉相手を知っていること、なんらかの共通点があることを重視する
  • 相手に好意を伝える
  • スモールギフトをおくる
  • 相手との共通項を見つける
  • 相手と同じ話し方・振る舞い方をする
  • 共同作業を行う
  • 「自律的決定」にこだわる人「自分で決めた」かどうかを重視する
  • 説得はあきらめる
  • 判断するための情報だけを伝える
  • リテラシーの高い人にはプラスとマイナスの情報を「両面提示」する
  • リテラシーの低い人にはプラスの情報だけ「片面提示」する
  • 「重要感」を重んじる人交渉相手が自分を「より重く」「より大切に」扱うかどうかを重視する
  • 本心から、丁寧に、敬意をもって接する
  • 連絡を受けたらすぐに反応する
  • 「ランク主義者」の人学歴や出身地など、人間の様々な属性に独自の序列意識を持っていて、その序列を重視する
  • 相手にとって高ランクの人間を交渉チームに引き入れる
  • 壮大なビジョンを掲げる(「お前は見所がある若者だ」と思ってもらう)
  • 「動物的な反応」をする人交渉中に突然怒り出したり、泣きわめいたりする
  • 交渉を進める前に、相手の精神的負担を低減する
  • ネガティブな感情的な反応にはつき合わない
  • 「アウトプット・ドレスコード・NGワード」 🔗

    アウトプットというのは「出力」のことで、交渉においては「何を達成するか?」という交渉のゴールのことを指します。

    ドレスコードとは(中略)、単なる外見に加えて「非言語的メッセージを与えるものすべて」を指します。

    相手に絶対に伝えてはならない機密事項や、「この話をしたらミーティングが紛糾してまとまらなくなる」といった情報があるはず。(中略)それはNGワードなのです。

    交渉に臨むときは、交渉チームがアウトプット・ドレスコード・NGワードを共有できているか確認する。

    感想 🔗

    社会人歴が伸びるにしたがい、交渉が必要な機会は増えていると感じている。本書で得た知識を生かせば、良い交渉ができるようになりそうだ。ちょうど大事な交渉の機会があるので、バトナを整理してから臨んでみたいと思う。